風に恋して
「4カ国会議でレオとセストが留守にするってわかっていたし、今日が楽しみだった」

その言葉と共に、エンツォの左手に風のエネルギーが集まっていく。

「――っ」
「朝、君が部屋に居なかったのには驚いたけど。まさか鍵がかかっているレオの部屋にいるとも思わなくて時間がかかっちゃったな。これも子供の力?……まぁいいや。焦らされた分、フィナーレは派手に行こうか?」

リアの爪が腕に食い込むのも気にすることなく、エンツォは涼しい顔でリアを見下ろしている。リアを見つめるその瞳は無機質なダークブルー。

「城に戻ったら、存在すら知らなかった自分の子が殺されていて、最愛の人も心が壊れている」

エンツォの高笑いが部屋に響いた。

「最高だ!」

(いやっ……レオ、レオっ)

リアの瞳からはとめどなく涙が零れて、首を掴むエンツォの右手を濡らしていく。

「可哀相に、リア。レオと恋に落ちたせいで、俺に利用されるんだから。あぁ、お腹の子を殺したら、俺が記憶を開けるまでもなく狂っちゃうかもね?」
「ぐ、ぅっ」

エンツォが呻くリアを見つめながら、フッと笑った。

「さよならだ」

その言葉と共に、エンツォの左手の風が嵐のようにうねった。

(レオ!)

ドン、という鈍い衝撃。

部屋中に風が吹き荒れ、窓やシャンデリア、時計に写真……すべてが宙を舞う。リアはそれを涙でぼやける視界の中、遠くの出来事のように見つめた。

「レ、オ――っ」
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