風に恋して
脱衣所――にしては広すぎる空間――に出て行くと、何人かの侍女がリアの身体を拭き、下着を着けていく。更に新しいドレスを着せられて、鏡台に座らされた。

まるで人形になったような気分だ。

ドレスは淡いピンク色でホルターネックになっている。スカートはすらりと長いシフォン素材。

城での普段着はシンプルなドレスと決まっているらしい。

脱衣所に用意されていた何着もあるドレスは色こそ様々だが、デザインは軽くリボンがついていたり、スカートの裾や襟元にレースがついていたりする程度だった。

侍女がリアの長い栗色の髪を乾かしていき、薄く化粧を施す。髪の毛が乾くと前髪を右の耳元まで編みこみにされ、後ろの髪も右耳のところで1つにまとめられた。そこに挿されるドレスより少し濃い色のバラの髪飾り。

ふいに、鏡の中の自分と目が合ってリアは俯いた。

隠し切れない昨夜の熱と、ヴィエント王国の紋章。

来たことがないような上質な生地のドレスに滅多にすることのなかった化粧、そして使うシャンプーの違いなのか艶の増した気がする髪。

すべてがリアの目の前に突きつけられて。

けれど、見たくない。

自分であって、自分でない、こんな姿は。
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