風に恋して
「レオ様!」
『うっ、ふぇっ、ぱー!ぱー!まーま、んー』

大きな音を立てて扉が開き、セストが血相を変えてレオに近づくのと同時にガタッと窓が開いて入り込んできた風。そして、広間に響く声。レオの……レオとリアの子の声。

どうして気づかなかったのだろう。

苦手なはずの桃をよく食べるようになったリア。微熱も長引いて、ベッドに丸まって眠ってばかり。

交流会のときの、突風と同じ……風の匂い。自分の風とよく似たそれに混じったほんの少しの水気――その風を誰が使うかなんて。

「これは……」

マーレ国王が驚いた声を出し、その場にいた全員が顔を見合わせる。

「あぁ、やはり……なんてことだ」

セストが額に手を当てる。風はレオの周囲をぐるぐると回って何か急かしているようだ。

レオは咄嗟にノエ、そしてユベール王子へと視線を滑らせた。ノエは何が起こっているのか把握できていないようで、とても驚いたように風を目で追っている。

だが、ユベール王子は……

「リアが懐妊していたなんて知らなかったなぁ。どうして教えてくれなかったの?それに……とっても賢い子みたいだね?」

クスッと笑ったユベール王子はすべてを知っている。だが、今はそれよりも――
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