風に恋して
「……ァ、っ……リア!」

あぁ、レオの声が聴こえる。これは……夢、なのだろうか。

「リア!」
「レ、オ……」

目を開けると、レオがギュッと抱き締めてくれた。この温もりは、本物……?

「わ、たし……」

ぼんやりと視線を移すと、嵐が通り過ぎたかのように散らかった部屋を認識できた。

「良かった。間に合って……」
「赤ちゃん、は?」
『んー、んー!まー!』

リアの声に反応して、緩やかに風が吹く。

「なるほど。随分賢い子供みたいだね?まったく……うまくいかないものだな」
「エンツォ!お前――っ」

間一髪、だった。レオが部屋に降り立ったとき、まさにエンツォの左手の風がリアのお腹に吸い込まれそうになっていて……

「ソプレっ」

咄嗟にそう叫んで、吹き飛ばした。レオの起こした風は、その子の力も乗ってすべてを吹き飛ばすかのように部屋中の物を巻き込んで弾けた。リアもその衝撃に弾き飛ばされ、それをレオが受け止めたのだ。

「ククッ」

エンツォが笑いながら髪をかきあげる。窓ガラスの破片で切ったのか、頬から血が滲んでいる。それを拭い、エンツォがニッコリとレオに笑顔を向ける。
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