風に恋して
「久しぶりだね、レオ。君の顔は見る予定じゃなかったんだけど……」
「ずっと、見ていたのだろう?」

レオがエンツォを睨みつけると、エンツォもスッと笑みを消す。

「ようやくお気づきだね?」
「あぁ、まったく……どうしてカタリナだけは違うと思っていたんだろうな」

カタリナは幼い頃からリアに付いていた。最初は見習い侍女としてだったが、リアは侍女としてではなく、友達や姉妹のような存在としてカタリナを慕っていたし、彼女もそうだった。

剣の修行も、最初はリアを守るためにと始めた護身術程度のものだった。けれど、その才能はみるみるうちに開花し、ノエ将軍にも引けをとらないものとなり、侍女として働きながらたまにノエ将軍の補佐も行っていた。

「いや……カタリナが花束を持っていたとリアに聞いてから、何かがおかしいと思っていたのに、俺の失態だ」

先入観――カタリナに限って、と。また、レオはカタリナの実力をよく知っていたこともあってカタリナだけは操られることはないと思っていた節もある。

能動的な呪文は得意ではなかったが、カタリナは相手が呪術者の場合の対応策や防衛方法を完璧にマスターしていた。並大抵の者では彼女を屈服させることはできないし、殺せない。

「ククッ。やっぱりカタリナを選んで正解だった。レオ、君はリアとカタリナには昔から甘かった」

リアに対しては“惚れた弱み”とでもいうのか……レオのすべてでリアの望むことを叶えてやりたいと思う。そのリアが信頼を置くカタリナのことを、オートマティックに信頼してしまっていた。
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