風に恋して
レオはリアを抱き上げてセストの元へ下ろすと、ため息をついて立ち上がる。

「レオ……」
「リア様、あまり動いてはいけません」

離れていくレオを追いかけようとするリアをセストが止める。レオは振り返って、リアを安心させるように微笑んだ。

リアの白い肌にところどころ切り傷がついているのは、やはりガラスの破片で切ってしまったのだろう。セストがすぐにトラッタメントを施す。

レオはエンツォに向き直り腰に携えていた剣を抜いた。

「俺を殺すつもり?」
「必要ならば、それも厭わない」

グッと剣を握る拳に力を入れると、エンツォはクスッと笑った。

「今まで野放しにしちゃってたもんね?自分の失態は自分で挽回しないと、ってことかな」
「いつから……というのは聞くまでもないか」

カタリナが最初からエンツォだったのなら、すべてがつながる。

同じ休憩室を使う侍女を操ることも簡単だろうし、盗んだ鍵で研究室を開けておくタイミングもリアが図書館から帰るときをピンポイントで狙える。開けっ放しで他の執事や侍女に気づかれて報告されないように。

リアの知らない“リア”を少しずつ見せていくことで、記憶のない彼女を追い詰めることも簡単にできるし、レオのスケジュールを把握していればリアの部屋に来る時間も大体予想がつく――呪いの最後のトリガーを引いたのもカタリナだった。

リアがレオに心を許したところで、また記憶操作の呪文をかけようとしたのもピッタリのタイミング。

そして……交流会の花束。おそらくはユベール王子がノエ将軍としてカタリナに花束を渡した。あとはリアに接触できたところで偶然通りかかったように彼らに近づけばいい。
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