風に恋して
「やはり、デペンデンシアを……」

セストはエンツォを睨みつけた。ここまでいろいろなことをやってのけた、この男ならば不可能も可能にすると、そういうことか。いや、エンツォを突き動かす憎しみが自然の理をも覆す、と……

「やっと記憶修正を習い始めた君には一生使えないだろうね?」
「たとえ使えたとしても、私は貴方のように命を軽々しく弄んだりしない!」

バカにしたようなその言葉に、セストが叫ぶ。

「ハッ!俺はどっかの甘いキャンディのような国王様とは違う。目的のためならどんなものも犠牲にできる」

だから、まったく関係のなかったカタリナやリアまでも巻き込んだというのか。

「命などというが、心の壊れた母さんだって死んだのも同然だ。あいつに殺された!」
「オビディオ様は――っ!」

セストがその名を口にした瞬間、エンツォの顔が憎しみに歪み、旋風がセストとリアを目がけて走った。

ドン、と大きな音がしてガラスの破片や埃が舞う。

「リア!セスト!」

レオはエンツォの風を自分の風で吹き飛ばし、2人の前に立った。
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