風に恋して
「ねぇ、レオ。君とセストをここに運んで、さすがに赤ん坊は疲れちゃったみたいだね?」

風の声が聴こえなくなったことを言っているのだろう。エンツォは楽しそうに口元を歪めた。レオはその剣を受け止めながら彼を睨みつける。

「何が、言いたい?」
「わからないの?もうリアのことを守れないかなって言ってるんだよ」

そう言って、右手をひらひらとレオに見せつける。

「呪文を使えると言いたいのか?それは俺も同じだ」

両手でエンツォの剣を受け止めてはいるが、言の葉さえ紡ぐことができれば呪文は使える。

「ふーん、じゃあこれでどう?」
「――っ」

フッとエンツォの剣から重みが消え、剣が払われる。しかしすぐにそれはレオを目がけて振るわれた。

剣のぶつかる音が絶え間なく響く、王の部屋。

(くそっ!)

速く重い攻撃にレオの呼吸が乱れていく。これでは呪文を唱えたとしても、本来の力にはならない。それとは対照的に、エンツォは余裕の表情だ。

「お前、くっ……何を、飲んで、いっ、る!?」

ありえない体力。何か薬を飲んでいるとしか考えられない。

「そんなの、企業秘密に決まってる。この攻防も飽きたし、そろそろ終わりにしようか……デストルクシオン」
「リア!」

囁くようにエンツォが呪文を唱え、地響きと共に竜巻がリアへと解き放たれた。レオの叫びはそれにかき消されて。
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