風に恋して
「――っ」

その衝撃に思わず閉じてしまった目を薄っすらと開けると、レオの視線の先で水のベールがリアの前に作られていた。それに吹き付けるエンツォの破壊の風。

「もうやめて、エンツォ」

リアが泣きながら両手で水のベールを支えるように腕を突っ張る。

「リア様、いけません。こんな呪文を使い続けたら貴女の体力が……」

セストがリアの腕を掴むがリアは弱々しく微笑んで「大丈夫」だと伝えるだけで、呪文は解除しない。

「やめる?そんな選択肢はない」
「うっ――」

エンツォの風が強まって、リアが顔を歪める。水のベールが風に押されてリアの方へとしなっていく。

「セ、ストさん……気を、貸して…………」
「でも――っ」

リアが力強い瞳をセストに向けて、セストはグッと言葉を飲み込んだ。そして、リアに気を送り始める。

「ふん、いつまで耐えられる?」
「エンツォ!やめろ!」

レオが再び剣を構えてエンツォに飛びかかる。けれど、エンツォはそれを軽々と弾いて、またレオとの攻防が始まった。

その間も、風の威力は落ちない。
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