風に恋して
イヴァンとディノが王の部屋で3人を見つけたとき、セストとレオの意識はなく、リアは金切り声をあげながら自らを傷つけるようにその白い肌を引っかいたり叩いたりしていた。

ディノはそれを見た瞬間、血の気が引いた。彼女の精神が崩壊しつつあるとすぐにわかったからだ。

レオもセストも真っ青な顔をしていて、イヴァンがすぐにレオに止血を施した。セストの止血は済んでいたが、かなり血が流れてしまったようですぐに輸血が必要な状態だったし、皮膚の損傷もひどく、目も当てられないような有様だったのだ。

しかし、妙なのは城がいつもと何ら変わらない様子だったこと。あれほど散らかった部屋を作り出すのにはかなり激しい戦闘があったはずだ。そうすれば音や漏れてくる気で城の人間が全く気づかないということはありえないのに。

風の子の助けを聞いたイヴァンが焦ったようにディノの部屋へやってこなければ……確実に手遅れになっていた。特に、リアの処置は。

とりあえず王の部屋を施錠し、イヴァンと協力して3人を治療室へ運び、治療を始めた。それが、昨日の話。

エレナは人手が足りなくて呼びつけた。ヴィエント王国の診療所で研修をしている彼女は急いで飛んできて、今朝から治療室に入っている。

彼女はまだ養成学校を卒業したばかりの身だが、事情が事情なだけに身内を選んだ。もちろん、彼女の腕はディノも認めている。イヴァンも最初は渋っていたが、彼女のトラッタメントを直接見てOKを出した。

もうすぐ太陽が一番高くなる時間。

1日経った今も、リアを治せる可能性のあるセストはイヴァンが治療中。背中の傷はもう少しで完全に癒える。今輸血している分が終わればすぐに目が覚めるはずだ。いや、目覚めてもらわなければリアが助からない。

リアの隣のベッドではレオが眠ったままだ。内臓に損傷があったからトラッタメントにも時間がかかった。彼もまだ目を覚まさない。

そして、泣き止むことのない風の子。
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