風に恋して
食べたくない。

意地、なのかもしれない。

知らない場所で、知らない人に囲まれて……それなのに、周りは自分を知っていて。何でもいいからこの状況に逆らいたい。

「……」

零れそうな涙をグッと奥歯を噛み締めて耐える。そんなリアを見て、カタリナが微かにため息をこぼしたのが聴こえた。

「わかりました。では、後で召し上がれるようにこちらに置いておきます。それから、適当に果物でも切っていただけますか?」

最後はシェフに向かってそう言い、カタリナはテーブルの片付けを始めた。

リアは何も言わないまま立ち上がり、ベッドに突っ伏した。零れた涙が枕を濡らしていく。

「リア様、お好きなときで構いませんから少しでも口にしてください」

部屋を出る直前、カタリナがリアに声を掛けてくる。

わかっている。リアだってクラドールなのだ。食事をしないことがどういうことかもわかっているし、このまま拒否し続けることもできないと知っている。

ただ、今はそんな気分には到底なれない。

リアは扉が閉まる音を聴いてから「うっ」と声を漏らした。泣いても仕方ないけれど……それでも、浅はかな考えに縋りつかずにはいられない。

このまま眠って……目が覚めたときに家に戻れていたなら。

すべて、夢なら――
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