風に恋して
そんなやりとりから1週間ほど経ったある日。

「ねぇ、レオ。マルコおじさん……大丈夫だよね?」

リアは隣に並んで座っているレオに問う。中庭のお気に入りの木の下、先ほどから本を読んでいるけれど、読めていないというのが本当のところだ。

「あぁ。うちの争いではないし、万が一飛び火したとしてもマルコが怪我をするようなヘマをすると思うか?」

マルコは今、一軍を率いてルミエールとの国境警備に赴いている。その付近のルミエール王国側では紛争が起きているため、万が一を考慮してヴィエント王国の方へ被害がないよう守っているのだ。

「うん、そうだよね……」

そうは言ったものの、リアの胸騒ぎは収まることを知らないらしい。

「リア。どうした?マルコも大丈夫だって言って出て行っただろ」
「わからないの。でも、怖いの」

なぜなのだろう。マルコが現地へ行ってから数日が経つのに、今日になって急に不安に襲われている。

リアが少し震えていると、レオがそっとリアの身体を抱きしめてくれた。

「大丈夫だ。万が一怪我をしても、城には優秀なクラドールがいるだろう?お前も含めて」
「ん……」

リアはレオの胸に頬を寄せた。安心する、レオの温かい腕の中……

「レオ様!」

そんな、ゆっくりした時の流れに身を任せようとしたとき、セストの声が遠くから聞こえた。

息を切らして走ってくるセストは、かなり焦っているようだ。
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