風に恋して
リアの全身の血が、逆流したような気がした。

セストがこんなに慌てたところを見たことがない。それに、今報告があるとすればそれは確実に――

「国境付近で戦闘が……ヴィエントの兵糧目当てのようで、こちらにも怪我人が出たと。詳細はまだ……」
「わかった、すぐに行こう」

レオがリアから身体を離して立ち上がった。

オビディオは今、フラメ王国との定例会議に出ている。レオが代わりに指揮を執るのだろう。

リアは思わずレオの服を掴んだ。

「私――っ」
「ダメだ。お前は城で待っていろ」

最後まで言わせてすらもらえなかった。リアの考えていることなどレオにはすべてわかってしまうのだ。

「でも、マルコおじさんが無事かわからない!」
「あちらにはリベルトが行っている。もし負傷しても治すクラドールがいるんだ」

それは、わかっている。でもリアが言っているのはそういうことじゃない。

「嫌!お願い、レオ。連れて行って」

リアがレオの服を掴む。

「リア――」

レオが再びリアをなだめようとしたときだ。ヒュッと、紙がレオの耳元に飛んできてレオの動きが止まる。

(何?)
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