風に恋して
けれど、リアの願いが届くことはなかった。

毎日同じように「夢ならば覚めてほしい」と眠りにつき、カタリナの用意する紅茶の香りで現実に引き戻される。

シェフが、カタリナが、リアのことを知っていることを十分に理解するのに長い時間はかからなかった。

レオは毎朝、毎晩リアの部屋へとやってくる。

朝は顔を合わせなくてはいけない――と言っても、リアはレオを見ようとしなかったけれど――が、夜は早くにベッドにもぐりこみ寝たフリをすることでやり過ごす。

今日も……

シーツの中で、部屋の扉が開いたのを聴く。レオは、リアが本当に寝ていると思っているのかベッドに近寄ることもしない。

「おやすみ」

と。毎晩、それだけを呟いて部屋を出て行く。

リアも、そのレオの言葉を聴いてから眠りの世界へと誘われる。会いたくない、見たくないと思っているのに……そうやってレオの「おやすみ」を待っているかのような不思議。

(違う……)

ただ、眠れないだけ。城で特にやることもないまま過ごすリアが早い時間に眠れるはずもなくて。

でも。

レオの「おやすみ」は、どうしてかリアの瞼を重くする呪文のようにリアを包み込むのだ――…
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