風に恋して
バン、と……いつかと同じ風が勢い良く吹いた。

棚に置いてあった薬ビンや本が落ちて、エレナとセストが咄嗟に呪文を唱えてそれらを受け止めていく。

『ぱー!』
「お前は……元気になりすぎだ」

レオは少し困ったように笑った。そして……ハッとしてリアの方へ視線を戻す。レオの手がかすかに握り返されたからだ。

「レ……オ、私……」
「リア!」
『きゃはっ!まーまー』

レオは身体を起こそうとするリアを手伝ってから、その細い身体を抱きしめた。温もりを確かめて、リアの唇を塞ぐ。

「ん、っ」

何度も何度も重なる2人の唇に……苦しくなってリアがレオの胸を叩く。レオはそっと唇を離して濡れた唇を親指で拭ってやった。

「痛いところは?記憶は?」
「えっと、少し頭が痛いけど……記憶が混ざっているせいなの」

リアがそう言うと、レオがホッと息を吐いた。そして、レオの背後で1つ咳払いの音。そんな効果音をつけるのは、セストしかいない。

真っ赤になったリアを見て、レオはセストを振り返る。その隣ではエレナが頬を染めてもじもじしていた。
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