風に恋して
「や、レオ――っ」
「レオ様、そろそろ起きていただかないと執務が溜まっております」

いつのまにか……寝室の入り口に立っていたセストに声を掛けられて、レオがピタリと動きを止める。リアはボン、と音が出そうなほど真っ赤になってシーツにもぐりこんだ。

「セスト、お前黙って主の寝室に入り込むな」
「申し訳ございません。何度もノックしましたのにお返事がなかったものですから」

セストは淡々と言い、部屋のカーテンを開けた。薄暗かった部屋が一気に明るくなる。

「リア様は、こちらをお召しになって湯浴みへどうぞ。侍女たちには待機させております」

シーツの中で丸まっているリアにも特に構うことなく、ベッドの足元に着替えをおいてレオに向き直る。

「レオ様もお着替えになって朝食をサッサと済ませてください。リア様に付きっ切りだった分、働いていただかないと」

確かに、リアが目覚めない間は急いで処理しなければならない案件以外はほとんど執務を行っていなかった。つまり、これからが大変ということだ。

「わかったから、お前はもう出ていろ」
「承知しました」

レオがため息をついて言うと、セストは軽く頭を下げて部屋を出て行った。

「レオのバカ……」

リアが恨めしそうにシーツから顔を覗かせる。怒っているらしいが上目遣いでそう言うリアは、怖くない。むしろ可愛いのだ。

「俺だけのせいじゃない」

無意識にリアが誘うからいけないのだ。

「もう……」

そう言って膨れるリアに、思わず笑みがこぼれる。元に戻った2人の距離を感じられる。レオはリアに触れるだけのキスをした。
< 288 / 344 >

この作品をシェア

pagetop