風に恋して
レオは表情を変えないまま、リアに近づいていく。

「リア」
「いや……来ないで、ください」

ゆっくりと近づくレオ。リアが後ろに下がりながら、ふとバスルームの扉に視線を留めてそちらへと駆け出したリアのほうに手を差し出し、レオは呪文を唱えた。

「ベニール」
「いやっ」

バスルームの扉は鍵がかかる。だがそれも逃げ込めれば、の話だ。

呪文の効果でリアの身体を風が包み込み、ふわりとレオの方へと吹き飛ばす。レオはその細い身体をしっかりと受け止めた。

柔らかく小さなリア。レオの鼻をくすぐる優しい香り、レオが求めてやまない、レオの愛する人。

その腕から逃れようとするリアの腰を抱きかかえ、近くのソファに座り、リアをレオと向かい合うように膝の上に座らせた。

栗色の髪の毛をそっと耳にかけてやり、翡翠色の瞳を覗き込む。潤んだそれと、目尻から頬へと流れるような道筋。目元が赤く腫れている。

「泣いていたのか?」

レオがリアの頬に残る涙の跡を指でなぞるとリアは顔を背けた。

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