風に恋して

解けていく糸

リアは読んでいた本を閉じて棚に戻し、ため息をついた。

あれから数日、レオもセストもリアの治療をしていた間に溜まってしまった執務を消化するのに忙しく、なかなかゆっくり話す時間を見つけられない。

話さなければならないことはたくさんある。

リアの見たエンツォの記憶と、ユベール王子の呪文のこと。それから――マルコ将軍のこと。

あの日、自分がマルコにトラッタメントを施したことは覚えていた。でも、次に気づいた時には自分のベッドの上だったのだ。

それで、リアのトラッタメントの効果も薄いまま、血が止まらなくて結局亡くなってしまったことがショックで倒れたと聞かされた。

副作用はマルコの姿にショックを受けて暴走しかけたせいだと……レオは言った。でも、リアは確かに赤い瞳を“使って”いたのだ。

『まー?』
「あ……うん、なあに?」

ルカの声に答えると、ふわりと風がリアの頬を撫でて窓を揺らした。外に出たいのだ。

「じゃあ、中庭に行こうね」
『んー!』

嬉しそうな声に、リアは表情を緩めて研究室を出た。
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