風に恋して
「うん……」

リアは俯いた。エンツォは、手を出してはいけない呪文や薬を使いすぎている。デペンデンシアにしても、本来の器とは違う身体で過ごすというのはかなりの負担がかかるはずだ。

いくらカタリナの身体がレフレクシオンの効果でエンツォを受け入れていたとしても、エンツォの精神自体はそのまま入っているようなもの。

レオと剣を交えていた時の異常な力も薬で力を増幅させているのは明らかだったし、それに……エンツォに記憶を開けられて思ったことがある。

「ねぇ……マルコおじさんが怪我をしたとき、毒を使われてたって言ってたよね?」
「リア、お前やっぱり……」

レオがハッとしてリアを見つめる。心配そうなレオに、リアは笑顔を返した。

「うん。でも、大丈夫だよ。2人とも……私のために嘘をついていてくれたんだね」

確かにあの日、目の前で、しかもリアが処置をしている最中に息を引き取ったマルコを見てショックを受けた。自分のせいだと思った。倒れたのは副作用のせいだけじゃなく、そういった精神的なものもあったけれど。

「違う。どうあがいても、マルコは助からなかった。だから……」
「わかってる。マルコおじさんは、城に連れてこられたときにはもう手遅れだったって。でも、私なら助けられたかもしれないのは事実だよ」

リアは両手を胸元で握った。

あのまま普通のトラッタメントを続けていても、マルコは助からなかっただろう。そして、彼の状態を見たときからあの場にいた全員がそれを覚悟していた。
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