風に恋して
けれど、赤い瞳なら彼の死という“運命”に逆らうことができた。だから……リアはリスクも承知で自ら力を解放したのだ。

ただ、助けたいという感情に流されてしまった。感情的になって周りが見えなくなってしまうこと、そして赤い瞳のリスクを100%理解するほどリアは大人でもなかった。

それをきちんとわかっていなかったことが、リアの罪。

直接の原因が自分にないとしても、彼を死に追いやるような行動に出てしまった。それは、忘れてはいけないことだったのに。

「違うんだ、リア。あのとき……お前がマルコの中に入っていた時、マルコはお前の名前を呼んだ。笑っていたんだ」

レオがリアの両手をその大きな手で包み込んでくれた。

マルコはリアを責めていないだろうか。それを考えると怖かった。助けてあげられなかったことが、こんなにも痛い。でも、レオの言う通り彼が自分の名を呼んでくれて笑っていたのなら。

「そっか……マルコおじさん、苦しくなかったかな?」
「とても、安らかな顔をして眠りにつかれましたよ」

永遠の、覚めることのない眠りに。セストの言葉にリアの頬に涙が伝った。

「うん……良かった」

簡単に償うなどと言ってはいけないのかもしれないし、償いと呼ぶには小さなことなのかもしれない。それでもリアはこの先1人でも多くの人の命を救って、自身の命が尽きるまで苦しむ人たちの手助けをしたい。

マルコの死を受け止めて、背負って生きていくのだ。

リアは涙を拭うと、顔を上げた。
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