風に恋して
「う、ん……実験、だったんじゃないかと思ったの。エンツォがこの城に来たのはあの後すぐだったでしょ?」

エンツォが城にクラドールとして迎えられることはその前から決まっていた。入城はマルコが亡くなった後だったけれど。

「エンツォは、オビディオ様自身にも復讐をしたいと思っていたみたいだった。それにあの薬を使おうと思っていたら……試しておく価値はあると判断すると思うの。特にユベール王子なら」

紛争に紛れ込ませた新薬……レフレクシオンを使えば反乱軍に潜入することなど、どうということはない。教育を受けられない貧民たちは呪文のことなどわからないし、属性感知もできないだろう。

それが、たまたまヴィエント軍――マルコ将軍を傷つけたのだ。

呪文の効果を薄める薬。何らかの方法でオビディオを傷つけ、その薬を使えば……マルコと同じ運命を辿ることになっただろう。王家専属のクラドールが優秀であればあるほど、その薬の効果は大きくなる。

「ところがその前にオビディオ様がご病気で亡くなられて、その薬を改良することにした、と?」
「どちらにしろ、改良する予定だったのかもしれないな」

セストとレオがそれぞれに考えていることを言っていく。
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