風に恋して
第七章:嵐が去るとき
来訪者
「一体何をしにきた?」
レオの低い声が客室に響く。セストもレオの後ろに控えているが、その目は鋭くレオの前に立つ人物を睨みつけている。
「何って、公務に決まってるでしょ?ちゃんと国境警備についての案件を処理して持って帰らないと、父上に怒られちゃうんだけど」
国境警備の案件をわざわざ王子自ら検討しに来て、しかも王であるレオを指名してきた。
「わかったよ。そんなに怒らないで。じゃ、これはそっちの軍の大将とうちの元帥で決めて。ほら、ジャン。セストくんについていって」
ユベール王子はセストに書類の束を投げ、そばに控えていた年配の、しかし服を着ていてもわかるほどに鍛えられた男性の背後に回りこむとツンとその背中を突いた。
「レオ様……」
「いい。行け」
「承知しました」
セストは一礼をして男と一緒に部屋を出て行った。
「それで?」
「うーん、やっぱりリアのことが諦められないんだよね。どうしても譲ってもらえないの?」
ユベール王子がポスッとソファに座り、足を組む。
「リアは王家専属のクラドールでもあり、俺の婚約者でもある。そもそも譲るという表現がおかしい」
「リアと同じこと言うんだねぇ」
レオの低い声とは対照的に、クスクスと高めの笑い声を出すユベール王子。その大きな瞳がスッと細められる。
レオの低い声が客室に響く。セストもレオの後ろに控えているが、その目は鋭くレオの前に立つ人物を睨みつけている。
「何って、公務に決まってるでしょ?ちゃんと国境警備についての案件を処理して持って帰らないと、父上に怒られちゃうんだけど」
国境警備の案件をわざわざ王子自ら検討しに来て、しかも王であるレオを指名してきた。
「わかったよ。そんなに怒らないで。じゃ、これはそっちの軍の大将とうちの元帥で決めて。ほら、ジャン。セストくんについていって」
ユベール王子はセストに書類の束を投げ、そばに控えていた年配の、しかし服を着ていてもわかるほどに鍛えられた男性の背後に回りこむとツンとその背中を突いた。
「レオ様……」
「いい。行け」
「承知しました」
セストは一礼をして男と一緒に部屋を出て行った。
「それで?」
「うーん、やっぱりリアのことが諦められないんだよね。どうしても譲ってもらえないの?」
ユベール王子がポスッとソファに座り、足を組む。
「リアは王家専属のクラドールでもあり、俺の婚約者でもある。そもそも譲るという表現がおかしい」
「リアと同じこと言うんだねぇ」
レオの低い声とは対照的に、クスクスと高めの笑い声を出すユベール王子。その大きな瞳がスッと細められる。