風に恋して
「こんなことをしても、ヒメナ様は喜ばないよ」
「君に何がわかる?」

エンツォがリアを睨む。

「わかるよ。私はレオを愛してるから、ヒメナ様の気持ちがわかる。オビディオ様を愛していた彼女の気持ち」
「そんなものは役に立たない!」

リアの言葉に、エンツォが叫ぶ。

「母さんはあいつを愛していたかもしれない!でも、母さんは君みたいに愛されてなかった!」
「父上はお前の母親をちゃんと愛していた!」
「黙れっ!」

思わず口を挟んだレオを、エンツォが睨みつける。それは、リアを睨むのとは質の違うもの。憎悪の炎が燃える視線。

「何度も言わせるな!お前の父親が母さんを捨てた!そのせいで、母さんも俺もずっと苦しんだ。それなのに、お前は両親に愛されて苦しみなどとは程遠い世界で生きている」

リアは目を閉じて、息を吐いた。そして、ゆっくりとエンツォに歩み寄っていく。

「リア!?」
「来ないで!大丈夫だから……」

レオがリアを止めようとしたけれど、リアは振り返って微笑んだ。レオがグッとリアに伸ばしかけた手を握る。信じる、ということだ。

「何のつもりだ?それ以上近づくな!」

少しずつ近づいてくるリアに、エンツォが一歩下がる。だが、リアがその手を掴んだ。
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