風に恋して
「リア……」
「い、いや……」

レオが唇を離して熱のこもった声を出した。そのトーンの意味を理解したリアが抵抗を強くする。その腰と肩を抱え込んでグッと自分に引き寄せ首筋に唇を滑らせた。

「やっ」

リアが身を捩るが、レオにはそれを押さえ込むことなど容易い。熱い吐息でリアの首から胸元までを何度も往復する。リアは歯を食いしばってその刺激に耐えているようだった。時折、レオの肩をつかむ手に力がこもる。

こんなに近くで触れ合っているはずなのに、遠い。

(なぜ……)

肌蹴た胸元の、消えかかった華に唇を寄せる。

こんな風に刻み付けても、リアの記憶が戻るわけではないのに。そうせずにはいられない。

「ど、して……こんな、のは……いやです」

リアが震える声で呟いた。レオは少しだけ身体を離してリアと向き合った。2人の視線が絡み合う。リアの潤んだ瞳には、レオが映っている。

そう、レオが映っているはずなのに……この綺麗な翡翠色は、レオを見ていない。

レオはリアの頬に手を当ててゆっくりと撫でる。親指でリアの赤い唇をなぞりながら、息を吐く。

「お前は……」

リアも、レオを求めていたはずではないか。それが今、彼女の口から出てくるのは拒絶の言葉ばかりで、レオに触れられるといつも涙を流す。何故――


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