風に恋して
「なぜ……なぜ、母さんはあいつを恨まない!?」
「エンツォ……」

リアは心が痛かった。どうしても、リアの言葉はエンツォに届かないのだろうか。

「約束、だと?お前たちは幸せかもしれない。幸せになれるだけの環境があった。だが、俺はどうだ?母さんも、俺も、あんな人間の屑のような男のもとで幸せ?笑わせる!そんな約束は果たされない!」

エンツォの瞳に、激しい憎しみの炎が戻っていく。

「これは運命だ。あの男に嫁がされた母さんの、そしてあの男のもとで育った俺の運命。俺が、王家への復讐を果たすことも何もかも、最初から決まっている!」

逆らえない運命に飲み込まれてしまったエンツォ。もうきっと、彼は自分で抜けることができないところまで溺れてしまった。

それならば……

(ルカ……お手伝い、できるよね?)

『まー、ん、んー!』

リアが心で呼びかけると、レオの近くで風を吹かせていたルカがリアのもとにやってくる。
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