風に恋して
「何を、するつもりだ?」

エンツォが急にリアのもとにやってきたルカに警戒してリアから離れようとした。しかし、ルカの風は素早くエンツォの身体に巻きついて動けなくなる。

「エンツォ。貴方が逆らえないというのなら、私が逆らってあげる」

運命に逆らえる力。

助けたい、救いたい、と思う気持ちは同じだけれど、マルコのときとは違う。記憶が戻ってからずっと方法を考えていた。そしてリアはそれを持っている。

ヒメナの記憶を見せても納得しなかったら、それを使おうと決めていた。

「リア!?」

レオがリアに駆け寄って肩を掴んだけれど、すでにリアは力を解放していた。「大丈夫」とレオに微笑んで、エンツォに向き直る。

エンツォの目の前に立ち、熱くなる瞳で彼のダークブルーのそれを見つめた。

「俺を、殺す気?」

リアは首を横に振った。

「殺さないよ。あのときの私とは違う。一時の感情の高ぶりに流された、幼い私とは違うの」

そして、リアはとても優しくエンツォに微笑んだ。
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