風に恋して
意識を失ったエンツォを、ルカがゆっくりと床に横たえる。そしてパチンと弾けて消えた。かなり力を使っていたから眠りに入ったのだろう。

「……っ、はぁっ……ふ、ぅっ」
「リア」

レオは大量に汗をかいてその場に座り込んだリアの身体を包み込んだ。

「だい、じょ……ぶ」

息が荒く、頭が痛いのかギュッと目を瞑っているリアは大丈夫には見えなくて。

「へぇ。記憶操作はかなり負担がかかるはずなのに、それだけで済むんだ?ますます欲しくなった」

ユベール王子がスッと立ち上がり、レオとリアに近づいてくる。レオはリアを背に庇った。

「エンツォのために犯人を仕立て上げた時の奴はあれで五感の機能がすべて半分以下になってさ。使いにくくて仕方なかった」
「なんだって?」

レオは思わず身体を硬くした。すると、後ろでリアがレオの服をギュッと握った。“大丈夫”と言っているのだと、理解する。
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