風に恋して
「さて。今の状況、どう見る?レオ、君1人の相手なら僕にも勝算があると思わない?」
「ルミエールの王子がヴィエントの王と争うという意味を、わかっているのか?」

ユベール王子の戯れ、個人の問題では済まされない。王国間の問題になる。

「じゃあ、そこに倒れてるエンツォがやったことにすればいい」

パッとユベール王子の体が光ってエンツォの姿になった。

「だとしても、セストがいる。お前がこの城にきたことはあいつが知っている」
「だから?セストくん1人が何と言おうが、そんなのは油にしかならない。戦争は世論だよ。“言いがかり”をつけられたらうちの国民の火は燃え上がる」

楽しそうに笑うユベール王子の手に、光が集まって剣の形になった。

狂っている。

ユベール王子はたった1人の人間を手に入れるために戦争をすると言っているのだ。これが、赤い瞳の魔力。誰もが喉から手が出るほど欲しがる神の力。

マーレ国王も、リアの両親も、彼女を道具にしたくなくて守ってきたのだ。オビディオとレオも。けれど今、リアの側にいてやれるのは、守ってやれるのはレオしかいない。

レオは呪文を唱えて剣を呼び寄せた。グッと、右手に力を込めてそれを握ればユベール王子がクスッと笑い、レオと睨み合う。

その緊張の糸が、切れる寸前――
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