風に恋して
ユベール王子がクロヴィスに連れられて帰った後、レオは副作用で苦しむリアをすぐに自室に運び、濡れた服を着替えさせてベッドに寝かせた。エンツォは別の部屋に寝かせている。

「レオ……」
「リア、本当に何ともないか?普通の副作用だけか?」

ユベール王子の言ったことが頭から離れなくてさっきから何度も聞いてしまう。

「ほんと……だから。平気」

その度に、リアはレオを安心させようと微笑む。

「レオ……エンツォの、こと……許して、あげて?」
「……っ、リア。それは……」

リアの願いは叶えてやりたい。けれど、エンツォは罪を犯しすぎた。

「1ヶ月、なの……」

リアがギュッとレオの手を握る手に力を込める。

「目が、覚めても……きっと、歩け、ない……」

リアの頬に涙が伝い、リアが“優しすぎる”と言ったユベール王子の言葉を少しだけ理解する。レオはそこまで温情をかけてやる気にはなれない。自分の大切な人を傷つけられて、エンツォがそれを許せなかったように、レオも許せないと思う。

余命が1ヶ月だとしても、自業自得だと思ってしまう。エンツォはそれを承知で行動していたのだ。

「お願、い……」
「……わかった。努力、する。だからお前は眠れ」

リアの涙は穢れを知らなくて……レオの黒い感情を洗い流してしまう。

「うん……」

ホッとしたように、リアが身体の力を抜く。

「ねぇ、レオ……ギュってして?」
「あぁ」

レオはリアの願いを聞き入れた。

そっとリアの隣に身体を滑り込ませて抱きしめる。額にキスを落とせば、リアはレオの胸に頬を寄せて眠りに落ちた。
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