風に恋して
レオはリアの身体を持ち上げて机の上に座らせると、その身体を挟むように机に両手をつく。少し身を屈めたレオがリアを見上げて、リアがレオを見下ろしている。2人の身長差ではあまり起こらないこと。

「正しいかどうかはわからない。でも、エンツォはお前のおかげで残りの時間を心安らかに過ごせる。違うか?」

憎しみから解き放たれて、穏やかな時間を過ごすことができるのだ。呪文も薬も、使うことなく。

「俺は、何も知らなかった。何もできなかった。父上がエンツォのことを知っているのも、母上がずっと苦しい気持ちを抱えていたのも知らなくて……」

ただ与えられる愛の中で生きてきて、幸せを感じていた。他の、こんなにも身近な人が心に影を抱えていることなど気づけなくて。

「いいんだよ。それがオビディオ様の望んだことだもの」

リアがレオの頭を撫でてくれる。

「それに、レオは私やルカに愛を与えてくれてる。オビディオ様がレオやエンツォにそうしたように。レオもエンツォのこと、ちゃんと考えてくれてる」

エンツォを城に置いているのは、リアの願いだからというのが理由の大半を占めるのだけれど。

「私の選択が正しかったかどうかはやっぱりわからないけど、だからこそ最後まで見届けたいの」
「あぁ……俺も」

今まで知らなかった時間には到底足りないけれど。せめて、残りの時間を濃いものとして残したい。見届けたい。

エンツォがレオをヴィエント王国の王として見ていても、レオは彼を“兄”として記憶に残すのだ。
< 332 / 344 >

この作品をシェア

pagetop