風に恋して
第二章:風のお城の記憶

リアの軌跡(1)

リアはヴィエント城の図書館にいた。

部屋で塞ぎこんでいることの多いリアを見かねて、カタリナが読書でも、と連れてきてくれたのだ。カタリナが、リアが読書好きだと知っていること……それはリアの心にまた1つ影を落としたけれど。

扉を開けた瞬間の独特の匂い――紙の匂い、とでもいうのだろうか。リアはこの空間が好きだった。

(す、き……?)

その考えに、リアはハッとした。

リアはこの図書館に来るのは初めてのはずだ。それなのに、なぜ……懐かしい、と思ったのだろう。

リアは自分の考えを否定するように首を振った。

「リア様?」

ふと、カタリナに呼びかけられてリアは現実に引き戻される。そっとその空間へと足を踏み入れると、たくさんの本棚に数え切れないほどの本が並んでいる。

国内の文献はもちろん、他国の文献も豊富に取り揃えてある。

リアはゆっくりと本棚の間を歩いて、たまに目に付いた本を手にとってペラペラと中を見る。

だんだんと眉間に皺がよっていくのが自分でもわかる。

読んだことのある本ばかり……

(気持ち悪い……)

頭の奥がズキズキする。
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