風に恋して
「最初、お前は俺の気持ちを受け入れてくれなかった」

レオはそのときを思い出して笑った。リアの気持ちを聞きだそうとして、それが出来なくて……無理矢理キスをした。

「……少し、強引に迫ったこともあった。そのときも、お前はとても怯えていて……後悔したんだ。今の俺も、同じだ」

ギュッと、リアを抱きしめる腕に力を込める。

「ごめんな……本当は、いけないとわかっていた。俺のことを覚えていないお前を、この腕に抱くことは、お前を苦しめることにしかならないと」

ごめん、ともう一度呟くように言う。

「耐えられなかったんだ。俺を思い出してくれるかもしれないと、バカな期待もした。お前は確かに俺を愛してくれていたから」
「わ、たし……あなたのこと、知ら、な……」

レオの腕の中で、掠れた声を出すリア。

そうだ。リアは……レオを忘れてしまった。けれど、心の奥底にレオの欠片が眠っていると……レオは信じている。自惚れでも構わない。

リアを抱いたとき、レオを呼んだリアの心を信じようと決めた。

「あぁ……それでいい。今は、それでもいいから。でもきっと……取り戻してみせる。もう一度、振り向かせてやる」

振り出しに戻った、それ以上に後退してしまったというのなら……もう1度リアの手を引こう。

「リア、お前を愛してるんだ」
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