風に恋して
それは――確かに両親も、リアも、王家専属のクラドールとしてこの城に住んでいたということ。

(わ、たし……私は――っ!?)

ドクン、と。

一際大きく心臓が音を立てた。

(な、に?)

頭が割れるように痛い。

「っ、う……」

リアは頭を抑えて床に片手をついた。

散らばったカルテがぼやけてくる。

頭の中で、たくさんの色と音がぐるぐると回る。知らない人たちがリアに笑顔を向けては消え、景色が目まぐるしく変わって、痛い。

「やめて……」

しかし、それは止まることなくリアの中を駆け巡る。

――『リア』
――『リア様』

リアの名を呼ぶ、数え切れない人たち。リアの知らない、人々……

「いやっ、いやぁ!」
< 56 / 344 >

この作品をシェア

pagetop