風に恋して
――その頃、レオは図書館へと向かっていた。

執務の合間にリアの部屋に行ったのだが、彼女はいなかった。この天気では中庭には出られないから、図書館に本を探しに行ったのだろうと思って歩いていたのだが……

それは、ちょうど階段に差し掛かったときだった。

『いやっ、いやぁ!』

下の奥の部屋からリアの叫び声が聞こえ、レオは階段を駆け下りた。

研究室の扉が少しだけ開いている。

レオは乱暴にそれを押し開き、中へと入った。資料やカルテの散らばった床に、リアが座り込んでいる。

「リア!?」
「うっ、やめて……やめ、っ」

リアは床に手をついて肩を上下させていた。

レオが駆け寄って身体を支えてやると、虚ろな目でレオを見た。おそらく現実の世界は見えていないだろう。

尋常でないほどの汗をかき、涙を流して呼吸をするのも苦しそうだ。

「リア、何も考えるな。思い出してはダメだ」

何が起こっているのか瞬時に察したレオは近くの薬品棚を目で追う。大小さまざまな瓶に入った薬品のうち、青みがかった液体の入った瓶に目を留めた。

それを取り上げ、蓋を外してリアの口元に持っていく。
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