風に恋して
「なくなった、だと?」
レオが一際低い声を出す。レオの執務机をはさんで立っていた3人のうち、2人がビクッと身体を震わせたが、セストはそれに怯むことなく、1歩前に出て話し始めた。
「研究室を最後に使ったのは今朝、東地区への往診へ行く前です。そのとき鍵を掛けたのは私も確認しております」
現在、ヴィエント城にはセストを含めて3人のクラドールがいる。そのうちの1人、ディノの所有する研究室の鍵がなくなっている。
「け、今朝は確かに――」
「ふざけるな。なくなった、で済む話ではない」
レオはディノの言葉をピシャリと遮った。
元々あの研究室は厳重に管理されている部屋だ。鍵も3つつけてあるし、本来ならば机の引き出しにも鍵がかけられているはずなのだ。
「盗まれたにせよ、故意に開けておいたのでしょうね。もっとも、ディノもイヴァンと共に往診に行っています。朝からずっと行動を共にしていたようですので、アリバイがあります。そうだよね?」
セストが2人に問うと、2人は首がもげるのではないかというほどに首を縦に振った。
「残るのは私ですが、レオ様もご存知の通り、今朝早くにマーレ王国との外交会議へと貴方の代わりに行きました。鍵も肌身離さず持っております。この調印書がアリバイにもなりますよね?」
セストが調印所をレオの机に置き、チャリと音をさせて鍵を見せる。
「帰ってきたのは、5分ほど前。とても不機嫌な貴方に出迎えられて、でございます」
そう言って、ニッコリと笑ったセストにレオはため息を吐いた。
レオが一際低い声を出す。レオの執務机をはさんで立っていた3人のうち、2人がビクッと身体を震わせたが、セストはそれに怯むことなく、1歩前に出て話し始めた。
「研究室を最後に使ったのは今朝、東地区への往診へ行く前です。そのとき鍵を掛けたのは私も確認しております」
現在、ヴィエント城にはセストを含めて3人のクラドールがいる。そのうちの1人、ディノの所有する研究室の鍵がなくなっている。
「け、今朝は確かに――」
「ふざけるな。なくなった、で済む話ではない」
レオはディノの言葉をピシャリと遮った。
元々あの研究室は厳重に管理されている部屋だ。鍵も3つつけてあるし、本来ならば机の引き出しにも鍵がかけられているはずなのだ。
「盗まれたにせよ、故意に開けておいたのでしょうね。もっとも、ディノもイヴァンと共に往診に行っています。朝からずっと行動を共にしていたようですので、アリバイがあります。そうだよね?」
セストが2人に問うと、2人は首がもげるのではないかというほどに首を縦に振った。
「残るのは私ですが、レオ様もご存知の通り、今朝早くにマーレ王国との外交会議へと貴方の代わりに行きました。鍵も肌身離さず持っております。この調印書がアリバイにもなりますよね?」
セストが調印所をレオの机に置き、チャリと音をさせて鍵を見せる。
「帰ってきたのは、5分ほど前。とても不機嫌な貴方に出迎えられて、でございます」
そう言って、ニッコリと笑ったセストにレオはため息を吐いた。