風に恋して
「え……あ、あの……私……?」

やっと返事をしたリアに、レオがホッと息をついた。

「倒れたんだ。どこか、痛むところは?」
「あ……頭が、少し……」

(倒れた?)

ふと辺りを見回すと、窓にはカーテンが引かれていて夜なのだということがわかる。おそらくは、かなり遅い時間だろう。随分長い間、眠っていたようだ。

確か、昼間にリアは図書館に本を借りに行ったはずだ。新しく借りた本は、きちんとベッドサイドに置いてある。レオが持ってきてくれたのだろうか。

その帰り、窓に叩きつける雨の音が響く廊下を歩いていたとき、扉の開いた研究室に――

「い、たっ……」

思い出そうとして、激痛が走る。

「リア!考えるな。今は、何も考えなくていい」

レオに抱き締められ、リアは目を閉じた。

「私……」
「何も言うな。もう少し休んだ方がいい」

そっと頭を撫でて、そして背中を優しく叩いてくれる大きな手。それが、心地良い。

今は……この腕の中で眠りたい。
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