風に恋して
「ああ。俺のことだけ、考えていろ」
「ん……」

レオはリアが頷くのを確認してから、ゆっくりと呪文を唱え始めた。リアの顔が苦しげに歪んで、レオの背中に爪が立てられる。

できるだけリアの負担にならないようにと思うが、リアは身体に力が入っていて、苦しそうに声を漏らす。それでも、だんだんとリアの心臓に浮かび上がっていく紋章が、レオとリアが結ばれていくことを示すのが嬉しかった。

「リア、目を開けろ」
「レオ……」

涙でいっぱいの瞳はレオだけを見てくれている。

「お前は俺のものだ。もう、逃げられない」

レオは笑ってリアの心臓に口付けを落とした。ヴィエント王家の紋章が刻まれた、心臓に。それから唇にキスをしてやると、リアがレオにしがみ付いてきた。

「逃げないよ。レオのそばにいる。レオも、ずっと私のそばにいて」
「あんまり可愛いこと言うと、優しくしてやれないぞ――」

長い、長い夜。

今までで一番熱い、めくるめく夜だった。

リアはレオの腕の中で甘く歌い続け、レオはその艶やかな旋律に酔いしれた。レオは飽くことなくリアに想いを刻み続けて、それは2人の大切な夜になったのだ――
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