風に恋して
「リア様、落ち着いてください」
「リア?そんなに叫んで……一体何があった?」

カタリナがリアをなだめようとリアに近づくのとほぼ同時にレオが怪訝そうな顔をして部屋に入ってきた。

朝の執務が終わってリアの様子を見に来たのだろう。

「レオ様……リア様が、お食事を召し上がりたくないとおっしゃって……」
「わかった……いい。下がれ。後で軽食を持って来い」

シェフはレオにそう言われて頷き、食事をすべて片付けてから部屋を出て行った。

「リア、まだ具合が悪いのなら――」

レオがリアに向き直って優しく声を掛けてくる。漆黒の瞳に映る自分。それは……

(本物?偽物?)

「――っ、ぐ」

その瞬間、リアは頭に走った激痛に膝をついた。

「リア!?」

レオがサッと駆け寄ってきて、リアの身体を支える。

「う、く……はっ、ぁ……」

ズキズキと痛む頭と、大きすぎる心臓の音。リアは左胸に手を当てた。ギュッとドレスの布を掴む。

「リア?苦しいのか?カタリナ、セストを呼べ!」
「は、はい!」

レオがリアの背中を擦りながら、カタリナに向かって叫んだ。カタリナはすぐに踵を返し、部屋を出て行く。
< 86 / 344 >

この作品をシェア

pagetop