風に恋して
「はぁっ、はっ、う、ぁ……はっ」
「リア、しっかりしろ」

レオがリアの顔を上げさせる。リアは視線を彷徨わせて、レオを映した。

自分の呼吸の音がうるさい。汗が額に滲む。

今、苦しいのはリア?それとも“リア”?

「リア?大丈夫か?」

リアはその漆黒の瞳に映る自分を見つめた。

(私は……私は、誰――?)

「リ――!?」

突然、リアはレオの首に両手をかけた。思いきり体重をかけると、何の警戒もしていなかったレオは後ろに倒れてリアはその上に馬乗りになる。

『殺せ』

そう、頭の中に声が響く。すべてが真っ黒に塗り潰されていく。

これで……“リア”も、いなくなるのかもしれない。

リアは暗闇に沈んで意識の中、レオの首にかけた両手にありったけの力を込めた――
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