風に恋して
「レオ様!」
「来るな!」

セストが近づこうとするのを、レオは叫んで止めた。リアがまた“殺して”と呟き始めたからだ。

「リア!しっかりしろ!!」

レオがリアの肩を掴んで揺する。リアはゆらりと視線を彷徨わせてレオを捕らえる。

「っ!?」

その瞳の色に。

レオは素早くリアの身体を絨毯に押し付けると体勢を入れ替えた。それと同時にリアがまたレオの首に手をかけた。素早く反応したレオだったが、掴めたのはリアの片手。もう片方の手は強くレオの首を締め付けようとしてくる。

顔を歪めるレオを見て、リアは薄っすらと笑い、そして、綺麗な翡翠色であるはずの瞳が真っ赤に染まっていく。

レオは舌打ちをして、呪文を唱え始めた。レオの左手に風が渦巻いていく。

(許せ、リア……)

呪文を最後まで唱えると、レオはリアの心臓――王家の紋章が刻まれた場所――に左手を押し当てた。

手のひらの風が吸い込まれるように、リアの中へ消えていく。

「う、っ……ぁ、あぅっ、ぐ」

リアは苦しそうに呻き、身体を捩った。
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