風に恋して
静まり返った部屋、リアの呼吸音だけが響く。

「ぅっ、はぁっ」

少しでも苦しみを和らげてやりたくて、レオはそっとリアの手を握った。すると、リアが微かにそれを握り返してきた。

「リア?」

リアのまぶたがゆっくりと上がり、ぼんやりと視線を彷徨わせた。そして、レオの方を向く。その瞳が、ちゃんとレオを映しているのかどうか、レオにはわからなかった。

「くる、し……はっ、はぁっ」

レオはリアの言葉にギュッと強く手を握った。

『苦しい』

リアがレオの前でそう言ったことがあっただろうか。心配をかけまいと、寝込んだときさえ微笑んで、いつも『大丈夫』と言っていた。

記憶がない分、レオが誰だとか心配をかけたくないとか、そんな壁もなくなっているのだろう。これがリアの本音。

苦しくて、つらくて、きっとレオの想像を遥かに超える恐怖と戦っている。

守らなくてはいけない……自分が。

「ここにいるから。俺が、そばにいる」
「っ、はぁっ……」

リアの目から耳元まで、スッと涙の道筋ができる。

「ずっとそばにいるから、もう少し休むんだ」

目じりに溢れた涙にそっと口付けてやると、リアは少しだけ口元を緩めた気がした。
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