風に恋して
冷たい水が、喉を伝って身体に染み渡っていく。けれど、それはすぐにリアの熱に溶けていった。

「頭痛や吐き気はあるか?」

レオが空になったグラスを机に置いてリアに向き直る。リアは小さく首を横に振った。

「そうか……横になったほうがいい。眩暈がするんだろ?」

リアはぼんやりとレオの顔を見つめた。

(前、に……)

同じことがあった気がする。いや、あったのだろう。そうでなければ、頭痛と吐き気の有無を確認などしないだろうし、眩暈がすることもわからないはずだ。

「リア?」

ぼうっとしたままのリアにレオが声を掛ける。

(あのときは……)

リアは無意識にレオに手を伸ばした。しかし、身体が重くて腕が持ち上がらず、手のひらがゆっくりとシーツの上を滑る程度だ。

レオは少し驚いたように目を開いたが、リアの手をそっと掴んで引き寄せてくれた。

レオの胸に頬が当たる。規則正しい心臓の音が、リアを安心させてくれるようで……リアは目を瞑ってその音に耳を傾けた。

同じだ……この温もりも、音も、全部、自分は知っている。
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