君と恋色*tear rain
プロローグ
ふわりと、暖かく柔らかい風が吹く。
その風に乗って髪の毛がさわさわ揺らめきながら流れ、首元がくすぐったい。
私は目に掛かった髪をかき分けながらゆっくりと歩き出した。
今日から、新しい学校。
不安も少しあるが……何よりも、期待が大きい。
学校への道。街を見回し懐かしさを感じながら、ゆっくり歩みを進める。
大阪にあるこの街には、幼稚園に入る前から小学2年まで住んでいた。
しかしお父さんの仕事の都合で、小学2年の終わりにこの街を出て関東の方へ移り住んだ。
それからは色々な所を転々として、そしてつい一ヶ月程前に此処へ来ることが決まったのだ。
此処には、長く住めるらしい。
私は、今まで住んできた中で一番この街が好きだった。
大阪の中でも端っこの方でそれほど都会ではないが、辺鄙と言うほどでもない。
昔此処に住んでいた頃の、周りの人達の温かい人柄を思い出す。
今も変わっていないと良いな、なんて思っていると、少し離れた角に大きな塀が見えた。おそらく、あれが新しい学校だろう。