囚われの華
そんな様子の蓮を気の毒だと思わないではないが、言うべきことは言わねばならない。

「俺は遥の従兄弟で西園寺一族の一員であると同時に蓮のことは大切な友だと思っている。

遥を悲しませることも、蓮、お前が苦しむ姿も見たくはない。

俺は二人とも幸せになってほしいと思ってるからね。

だから己の意思に反して二人に婚約してほしいとも思わない。

そんなのはお互いにとって苦しいだけだ。

幸せには程遠いだろ?

おそらく、今夜当主から打診されるだろう。

いますぐ結婚とまでは言わないまでも婚約だけは早いうちにと考えているはずだ。

遥はまだ16だからね。

了承するも断るも蓮次第だが、遥が苦しまないようにしてくれ。

苦しむ姿は見たくないんだ。」

そう頼む玲央に蓮は

「分かってる…俺も遥ちゃんを苦しめたくはないから。」

そう告げた。

内容が内容なだけに重苦しい雰囲気になってしまう。

そんな二人の様子を離れた先で遥は心配そうに見ていた。

「ねぇ、聞いてるの?」

琴乃ちゃんの言葉に一瞬反応できなかった遥。

「えっ!?何?」

そう聞き返す。

「だからぁ、遥は蓮さまに思いを告げないの?」

そう聞く琴乃ちゃんに他の友人たちも同調する。

「言わないよ。言われても困るでしょ?

それに……告げたことで関係がぎくしゃくするのは嫌よ。

会えなくなるくらいなら最初から言わないわ。」

そういう遥に莉那ちゃんが

「でも、そうは言うけど恋人とか、婚約者の人が現れたらどうするの?

私は家が一般家庭だからそんなことないけど、遥の家も蓮さまの家も名門中の名門でしょ?

ありえない話ではないよ?」

そういうと美里ちゃんが

「莉那、起こってもないことを予想して言っても…

考えるだけ無駄だし、遥が可哀そうじゃない。」

と言う。

そんな二人の気持ちは痛いくらいに遥には伝わっていて。

「うん。それはありえると思うよ。

私にも婚約者出来るかもしれないし、もしかしたら蓮くんに出来るかもしれない。

いや、私が知らないだけでお互いに婚約者がいることも考えられるし。

私の答えは一つしかないよ。

私は今の関係を壊すのが嫌。

思いを告げることで今の関係が崩れるくらいなら言わずに我慢するし、祝福するよ。」

そう言いながらも頭の中で見も知らぬ女性と蓮が幸せそうにしてる情景が浮かぶと自然涙が出てきて…

そんな遥を囲んで友人たちは

「遥、泣かないで。私たちはいつまでも遥の味方だよ。」

と慰める。

「それに、泣いちゃうと幸せが逃げちゃうよ。

泣きやんで!!」

という茜に遥は頷いた。

今思えばこの時が一番幸せだった。

大好きな友達に囲まれ、大好きな人から祝福された誕生日会は遥が産まれてから生きて来た16年間で一番心に残る楽しい誕生日会となった。

だがその数時間後、奈落の底に引きずり込まれるくらいつらい出来事が起こるとはこの時の遥には知る由もない。

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