囚われの華
しばらく歩いていると、急に幸翔が立ち止まる。

急に立ち止まるから遥は驚き、

「どうしたんですか?」

と少し前を歩く幸翔に尋ねるが、幸翔は難しい表情をしていて、遥の問いには答えない。

だったらと遥は幸翔の見てる方向に目を向けようとする。

だが、そうしようとすると幸翔に

「見ない方がいい。遥さんが見るのは目が毒だ。」

といって見せないようにする。

だが、人間見せてもらえないと更に興味がわくもの。

見せないようにと幸翔が覆ってた手をずらし、幸翔が見せまいとしてたものをマジマジと見つめる。

そこには、ひと組のカップルが抱き合ってる姿。

「うそっ!!」

零れた遥の言葉は夜の闇に溶けていく。

目の前のカップルの片割れは、片割れは…

嘘だ。なんで…なんで蓮くんなの。

蓮君、付き合ってる人いないって、好きな人もいないって…

そういってたじゃない。

「あれ?もしかして知ってるの?蓮を。」

と不思議そうに聞いてくる幸翔に

「……蓮君は…従兄弟の友人なんです。」

ぽつりとこぼす言葉に幸翔はハッとする。

「まさか…遥さんの好きな人って…」

その言葉に遥は答えない。

そして、答えない答えこそ…真実。

「ここにいたら二人に気づかれる。

あっちに行こう。」

そういって、二人からは見えないけれど、声が拾える穴場に移動する。

「幸翔さん、お知合いなんですか…・?」

そう聞くのは先ほど難しい表情をしてたのを見てたから。

あの二人とどんな関係なのか…気になった遥は聞くのだった。


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