囚われの華
「うそだろ…?」

そう呟く蓮には既に目の前にいる女性を通り越して少し先に佇む遥しか見えない。

目の前には青白い表情をしてガクガクと震える遥がいた。

「遥さん、大丈夫ですか?」

隣にいる男が遥を揺さぶる。

「ここから離れましょう?ここにいたらあなたがおかしくなる。」

そういって遥を連れていこうとする男の顔を蓮は知っていた。

「まて。なんであなたがここにいる!?

遥ちゃんとの関係は?」

なんで遥の隣に彼がいるのか蓮は以前友人から聞いていた情報を敢えて考えずに聞く。

遥にとって一番親しい異性の知り合いは俺以外にはいないはず。

従兄弟の玲央を除いてだが。

遥から聞く話にも男の名前が出たことはなかった。

「それがあなたに関係ありますか?関係ないでしょう?

失礼!!」

そういって蓮の質問に答えることなく、その男は遥をつれてホールの方に戻って行く。

蓮は自分のそばを通る時の遥の表情に固まってしまって動けなくなってた。

俺が彼女を傷つけた。

あんな…表情をさせてしまったと。

聞かせるつもりのないことを彼女に聞かせてしまって。

どうすればいいのか…途方にくれたような状態の蓮を見て彩乃は笑みをこぼす。

「あら、いやだ。あなたがこんな辛そうな表情をするなんて…良い気味ね。」

キッと睨み、蓮は

「お前、あの子がいたこと気付いてたな?

だからか?俺に対するいやがらせか?」

そう聞く。

「あたりまえじゃない。気付かないあなたの方がおかしいわよ。

これであの子もあなたの本性に気付けたでしょ?

騙されなくてよかったんじゃない?

ほんっと、女性を馬鹿にするのもいい加減にした方がいいわよ?

でも、このくらいにしとくわ。あの子の事、個人的に恨みなんてないし。

恨まれるのも嫌よ。

あなたのことで一喜一憂したり、恨んだり、憎んだり疲れたわ。

もう、付きまとわないから。最後に…ごめんなさいね。

謝っとくわ。」

そういって俯く彩乃に蓮は罪悪感を抱く。

「すまない。俺のせいでそんなつらい思いをさせた。

愛してやれなくてごめん…」

そういう蓮に彩乃は

「やめてよ。そう思うなら、ほんとうに愛する人が出来たときに大事にしてあげて。」

じゃあといって彼女もホールの方に歩いて行くのだった。
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