囚われの華
「申し訳ありません。お嬢様はやはりお会いにならないと…」

そういって頭を下げる執事に

「そうか…明日は出かけられる用事などあるのかな?

なければ明日、出直してくる。」

その言葉に

「お嬢様は明日は何もなかったように思います。

バイオリンの日なので学校からすぐ戻られると思いますが。」

その言葉に蓮は

「分かった。なら、明日また伺うよ。迷惑かけたね。」

そういって屋敷を出ていく。

車に乗る前に蓮は視線を感じ顔をあげる。

スッと視線をむけるは遥の部屋。

だが、遥の姿はなく、カーテンがゆらゆらとゆれていた。

気のせいかと思って今度こそ、車に乗り込むと蓮は自宅に向かって車を発進させた。

車を運転しながらいらだちが募る。

「クソっ」

遥と離れたのはほんの数分。

やっぱり連れていくべきだったのだろうか?

乱暴なことをしたくなかったこと、外に出して風邪をひかないようにとの配慮でホテルのロータリーにいるように言ったのに。

車を回してきて戻ると遥の姿は消えていた。

焦ってホテルの受付に聞くと反対側のドアから出て行ったと聞いて舌打ちをした。

携帯に電話をしても繋がらないので屋敷に来てみたら既に戻っていて安心はしたものの、顔を見ないと本当の意味での安心にはならない。

なのに会いたくないと言う…

まぁ、仕方ないのかもしれないが。そう仕向けてしまったのはほかならぬ自分なのだから。
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