囚われの華
次の日、蓮は宣言通り遥の屋敷を訪れた。

「もっと、歌いあげて、そう、フォルテっシモ、そう。
そうです。もっと。」

バイオリンのレッスン中なのだろう。カノンが流れ、時折、先生の声も聞こえてくる。

「ただ今、遥さまはバイオリンのレッスン中です。
あと30分ほどで終わりますが、お待ちになられますか?」
そう聞かれた蓮は頷く。

「では、こちらにどうぞ。」
そういって案内されたのは昨日と同じ部屋。

既に紅茶とお菓子が置かれており、執事の
「では、しばらくお待ちくださいませ。遥様にはお伝えしておきます。」
という言葉とともに蓮一人になる。

「ふう…」
予想外に緊張していたらしい。
今でも緊張はしている。
なんて伝えようか、どういえばいいのか…

あんなこと、聞かせるつもりはなかった。
蓮にとって遥は妹みたいなもの。
本当に可愛いと思っていたのだ。
あの時は彼女づらしていた女性を追い払いたくて言ってただけ…
でも…遥ちゃんは理解してくれるのだろうか…
不安が忍び寄り、気付くと手に汗がついていた。

もうそろそろかな・・・?
執事が言ってた時刻はそろそろだ。
ということは、遥がこの部屋に現われるのもそろそろかもしれない。

姿勢を正し、遥がいつ入ってきてもいい様に準備する。

絶対に誤解は解いておかねばならない、そう思っていた。
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