囚われの華
「いたっ!!離してっ!!」

逃がさないとばかりに強く握られた腕は痛くて…

遥はそういうが、蓮は遥の言葉には反応せずにズンズンと庭の奥に進む。

「ここでいいかな。」

そういってようやく蓮が立ち止まったのは声が屋敷からは聞こえないほどの場所。

腕を離しはしないが、緩めてくれたので痛みは薄れる。

「ごめんね。遥ちゃん。こうでもしないと君は話を聞いてくれないと思ったから。

まずは謝らせてほしい。昨日のこと、あれは誤解だ。

一緒にいた女性を追い払うために話を合わせてたんだけど…

まさか遥ちゃんが聞いてるとは思わなくて。

信じてほしい。俺はあんなこと思ってないから。

でも、聞いた遥ちゃんにはひどい話を聞かせてしまった。

本当にすまない。」

そういって頭を下げる蓮に

「謝らないでください。そして、私こそごめんなさい。」

その言葉に蓮は遥が許してくれたのかと思い、嬉しそうにほほ笑むが、

「私、蓮さんの気持ちも知らずに本当にご迷惑ばかりかけてましたよね。

優しいから、いつも優しく接してくれてたから勘違いして。

甘えて。そんな私のわがままを許してくれてた蓮さんは本当に優しい方です。

そして、そんな私だから知ってます。

蓮さんは決して嘘はつかないと。

自分にも他人にも。

そんな蓮さんが好きでした。憧れました。

私の周りには平気で嘘ついたり、貶めたりする人いるので。

私の産まれた家では当たり前のことです。

だから…昨日のことは嘘じゃないはずです。蓮さんはそう思ってたんですよ。

私を傷つけたくないと思って嘘言わなくても大丈夫ですよ。

これからはご迷惑かけしませんから。」

そういって礼をすると蓮の制止をふりきって屋敷に戻って行く。

「クソっ」

近くの樹木をドンっと殴り、蓮は苛立たしげに屋敷から出て行った。

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