囚われの華
時間は戻る。
遥はあの日から、とにかく蓮を避けた。
会うことは勿論、電話、手紙…あらゆることから蓮を避けた。

「遥さま…」
心配そうに見てくる執事たちに
「大丈夫よ。ごめんなさい。」
そういって儚く微笑む。

ある日、
「遥さま、お客様がお越しです。」
そういって案内されてきたのは上条さんで。

「お久しぶりです。遥さん。」
そういって微笑む彼に
「お久しぶりです。」
と言ってサンルームに案内する。

「今日はどうされたのですか?」
あのパーティー以来、彼に会うのは初めてで。
いきなりの来訪に驚く。

「ええ、遥さんにお話があって参りました。
あなたも損はしないはずです。」

その言葉に興味をひかれ、話しを聞こうと耳を傾ける。

「あなたもですが、私も婚約者候補なる方々を次々と紹介されていまして…
少々嫌気がさしてまして…

それに、遥さんは気付かれてましたが、好きな人がいましてね。
でも、その人といますぐ婚約は出来ない。

なのであなたに婚約者になっていただけないかと。
その代わり、私も対外的な婚約者としてあなたを守ります。

この間のこと聞いてます。
遥さんはあの男が好きなのでしょう?
他の男と婚約なんて嫌なはずだ。
だから、一定期間私が婚約者として振る舞うことであなたを守りましょう。
その代わり、あなたも一定期間私の婚約者として振る舞っていただきたい。
婚約期間中にあなたもこれからのことを考えたらいい。

出来る限りのことはします。
決してあなたが困ることはしないので。」

必死にそういう彼に遥は
「いますぐ返事はできません。時間を下さい。」
そう伝えていた。
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